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 明星大学理工学部A棟(仮称)新築工事に関する請願
請願第14号、明星大学理工学部A棟〔仮称〕新築工事に関する請願について、賛成の立場から討論をおこないます。
本請願は、良好な住環境を教授していた住民たちが、突如、目の前に地上17階もの巨大な建物が立つことが伝えられ、それによって、日照権、眺望権等が阻害され、受忍の限度を超えるという訴えであるとともに、当該建築物の建設予定地付近は、ほたるの生息地であり、また、最近、絶滅のおそれのあるオオタカの営巣木が見つかったことからも、その建設においては、自然環境に配慮しなければならないと訴えています。
本市は、良好な環境を備えた街つくりを行うため、集合住宅等を建設する事業者に対し、必要な基準を定め、その負担と協力を要請することによって、「住み良い街」の実現を図ることを目的として、八王子市集合住宅等建築指導要綱を定めています。
その10条で、近隣住民に対する周知として、個別訪問あるいは全体説明会による周知を図り、報告しなければならないということが規定されているのですが、その説明会が、請願添付資料でもわかるように、事業者側の都合による一方的なものであったことから、近隣住民は納得できず、市に対して、事業者への指導・勧告等を行ってほしいと請願するとともに、紛争調整を申し出たわけです。
問題の第1は、この建築予定地が市街化調整区域であり、また、その所有者が学校法人であるということです。もちろん、市街化調整区域としての線引きがなされる前の所有とはいえ、公共的性格を持つ学校法人が、なんら高さ制限のないこの地域に住民との十分な話し合いを経ることなく、建築を実施しようとすることです。違法建築ではない、建築基準法に触れるものではないとはいえ、営利が目的ではない教育機関であるからこそ、市街化調整区域での開発が許可されていることを考えるのなら、教育機関としての社会的責任を果たすべきと考えます。住民との誠意ある十分な話し合いを行い、合意点を見出してからの実施とすべきです。
問題の第2は、この予定地が小川と林に囲まれた貴重な自然環境を有する地であり、ほたるの生息地でもあります。また、最近、絶滅危機動物であるオオタカが、明星大学を取り巻く森に生息していることが判明しました。国の環境基本法では、「絶滅のおそれのあるやし動植物の種の保存に関する法律」を定め、総合的な施策を策定、実施することが定められています。
つまり、猛禽類保護の進め方というガイドラインに沿って、調査を実施し、その結果、適切な保護方策がとられなければならないのです。ガイドラインでは、調査期間について、繁殖が成功した1シーズンを含む2営巣期の調査が望ましいとしてあり、およそ1年半以上の調査期間とするとなっています。もちろん、こういった調査を実施する際には、地道に観察を行っている、地元自然保護団体との協力が必要であることはいうまでもありません。この意味から、市の積極的関与が求められています。
問題の第3は、建築基準法上、違反がなければいいのかということです。最近の例でいきますと、国立市のマンション訴訟があります。この判決は、建築基準法に違反していなくても、景観利益を守ろうとする住民の受忍限度を超えて侵害した不法行為が成立するという結論でした。つまり、日照権や騒音公害、プライバシー、または、景観といった問題は、非常に個人差があり、また受忍の限度というものも、はっきりとした数値で表しにくいものです。しかも、そのときの地理的、社会的条件によっても違ってきます。その意味で法律になじまないところがあり、一律的な最低ここまでは守りなさいといった規制にならざるを得ないのですが、確実に言えることは、この国立のマンション訴訟にもみられるように、時代とともに、法が個人の権利を尊重する立場に立ち始めたということです。
住民と一番密接につながりを持っている基礎自治体は、まさに<住民の福祉の増進のための仕事をする」ことがその役割です。過去、八王子市では、建築紛争が1998年で10件、1999年で4件、2000年で22件、2001年で17件となっています。主な紛争の要因は、日照阻害、電波障害、プライバシー、工事騒音などであり、そのうち、市による紛争調整の結果、妥協または合意がなされたものは半数ということです。
もちろん、この半数の調整を成立させるためにも、担当職員の方々の努力は並大抵のものではないと想像出来ますが、やはり、市民の適切な要望を踏まえてのあっせんがもっと身のあるものとなってほしいものと思います。そのためには、職員の努力、住民の努力をサポートする何らかの仕組みが必要な時期に来ているのではないでしょうか。
2005年度は、まちづくり条例制定に向けて、動き始める時期でもあります。ぜひ、こういった条例の中で、日照の問題、景観の問題、プライバシーや騒音、といったことも盛り込まれるよう、さらに、こういった条例で、今後の紛争解決が一層速やかになされることを期待するわけですが、今、請願はそういう意味においても、新たな提案を行政にしていると考えます。
説明責任をベースとした住民自治、環境保全、そして良好な住環境形成、こういった観点は八王子市にとってもまちづくりの基本であることを訴え、本請願の賛成討論とします。

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