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2005年 第3回定例議会 議案討論 |
<要旨> 1. 指定管理者制度導入反対討論 2. 介護保険法の改正に伴う条例変更に対する反対討論 |
指定管理者制度導入反対討論 第112号議案八王子市立保育園の指定管理者の指定について、反対の立場から討論を行います。 まず、昨年3月、長房西保育園の民間委託反対の請願が1万筆あまりの署名を添えて、提出されました。そのとき、私は、保育園の民間委託は国の補助金の削減影響を民間委託によって、少しでも減らそうとするものであり、さりとて、民間保育園も都からの補助金削減で厳しい運営を強いられているといった、国を頂点とした保育予算の削減のしわ寄せの押し付け合いであり、その影響を子どもたちはもろにかぶってしまう、と指摘しました。 また、本市の場合、82園ある保育園のうち、公立保育園は17園で、そのなかでの公立保育園の役割は、保育サービスの質を確保するための基準つくりとして位置づけられ、これ以上少なくすることは許されない、との認識をも持っています。 さらに、民間委託にせざるを得ないという合意が保護者との間に取れたとして、進め方において、保護者との十分な話し合い、そして、情報公開、そして移行のルールー作りも必要であるとも指摘しました。 この視点は、指定管理者がきまった現在においても変わらないし、より一層このことが問題であることが明らかになったといえます。 まず費用の問題です。指定管理者が提示した予算額は1億3000万円で、直営でやると、1億6000万円ほどかかる、3000万円あまりの削減効果があると説明がなされました。しかし、なぜこのような削減が可能かというならば、それは人件費のカットで補うことが常となっています。選定された指定管理者が運営する園において、勤続年数8,3年という数字がそれを示しており、公立保育園の勤続年数を大きく下回り、民間園では、働き続けることによって、経験を蓄積していくような働き方が難しいという結果です。この点は、保護者の方々からも問題にされていた点であり、保護者の要望に対して、市側はバランスをもって、職員配置については募集要項に規定したというにとどまっています。勤続年数のみで保育の質が担保されるとはいいきれませんが、働く保育士等が安心して働き続けられる職場というものは、そこで生活する子どもたちにとっても安心できる場であることは間違いありません。 しかも、募集時においては、決して長くない8,3年という一定程度の勤続年数の職員の配置が確保されていても、それが今後5年間、継続されるものとの保障もありません。基本的に民間園の運営経費削減は人件費の切り詰めによってなされるわけで、今後5年間の職員の定着状況については、市の責任は明確になされていません。よって、保育の質の確保に対する保護者の大きな不安はなんら解消されていないといえますし、保護者からも同様の不安が寄せられています。さらに、雇用形態には市は一切踏み込んでいません。常勤職員というのは、一日6時間、月20日以上勤務のものをいうだけで、正規職員であるのか、期限の定めのある職員であるのか、市は責任を持たないとしています。市はそれは法人と職員との労働契約の問題であり、法人の判断としているからです。でも、公設として市の責任があるのですから、雇用形態については、不安定雇用を促進させるようなことがあってはならないと考えます。 また、選考過程においても、いくつかの問題があります。まず、第一に、八王子の場合、応募資格のある保育園のなかに、議員が園長をつとめる民間保育園があります。指定管理者の欠格条項として、八王子市は地方自治法92条2、議員の兼業禁止 に該当するものを排除していますが、園長は該当しないという見解です。しかし、今回の場合、園長といえども、法人の決定に深く関与していることは容易に想像できますし、また、市民に対してそういった疑念をもたれないようにするためにも、応募ケースから排除すべきであったと思います。保護者からも要望が出ている点であり、透明性の確保が担保されません。 今回は選考対象とならなかったのですが、指定管理者の選考には、議会の承認が必要であることから、もしなっていれば、自分の保育園の選考に自分で手を上げるという結果になります。 さらに、選考過程に関しては、保護者の代表がなんらかかわることはできず、審議過程を傍聴することもできませんでした。結果の報告についても、大項目での公表であり、点数付けとなっており、どうしてそういった結果になったかということの説明がなされません。信用してほしい、という心情的な問題ではありません。しかも第3者評価をしていく上でも、どういうプレゼンテーションを行い、それがどれだけ実施されているのか、といった評価においても、選考過程の議論を明らかにすることが必要です。市は事業内容やプレゼンテーションの内容は、当然遵守されるべきものであり、報告を求め、必要に応じて、調査、指導を行うとしていますが、プレゼンテーションになんらかかわっていない保護者が、どうやってその遵守を評価できるのでしょうか。疑問です。審議過程の非公開は企業秘密の保持、選考の公平性との説明ですが、十分な説得力を持っていません。自分の子どもを預ける園です。当然、どういった保育をするのか、プレゼンなり、また、何を基準に選考がなされたのか、といったことを知る権利は当然保護者にあってしかるべきで、傍聴すらできないということは、情報公開、市民協働の流れのなかで、納得できることではありません。通常の場合と違って、今回の指定管理者への移行については、保護者の側に一切の選ぶ権利がないのですから、十分な保護者の納得が必要です。私自身、子どもを保育園に預けるときには、どのような園か、見学に行き、園長や保育士に話を聞きにいき、子どもの様子を見に行きました。そしてこの園に預けようと選ぶわけです。 選考に当たっての得点化は公表されましたが、相対評価であり、応募団体の中からの最高得点のものを選考、という基準と保育の質の確保とは必ずしも同質のものとはいえません。 保育園に預ける親として保育の質をこう考えている、といったさまざまな視点、保護者からのこういった点を参考にして選んでほしいといった要望等がどう選考項目に反映されたのか、されなかったのか、公表文書からはみえてきません。保育の質とは、かたちではなく、内実なのですから、この点に関しても保護者の参加なくして語ることはできないはずです。 移行手続きについてです。保護者から引きつぎの心配が出され、解決していません。園長は10月から、そして担任予定者は1月から引継ぎに入るということですが、十分とはいえず、保護者も納得していません。 また、引継ぎのために担任予定者が新園に行くことになれば、今までの指定管理者法人が運営している保育園の人員体制はどうなるのでしょうか。 ある意味で大きな法人であればあるほど、有利になるということは明白で、保育園への指定管理者制度の導入において、公平な競争が成り立ちにくいといえます。これらのことを考えると、保育園の民間委託は引継ぎという大きな問題があり、そしてこのことは、引継ぎ期間を一定期間おいても、解決できる問題ではないということです。 ということは、人を対象とする、しかも幼い幼児を対象とする保育園事業に指定管理者制度がなじまないことが明らかです。つまり、指定管理者制度の導入に当たっての利便とされていた点、利用者のニーズにこたえられる、競争原理の導入で、サービスの向上をはかる、といった指定管理を行う用件がみたされないからであり、最初から懸念されたように、コスト削減要因だけが主目的化していってしまい、こういったコスト削減は不安定雇用を促進することとなり、行政が率先して不安定雇用の創出に手を貸す結果となるといえます。そのしわ寄せはすべて子どもたちにかかってきます。 今回の指定管理者の導入に当たって、保護者の方々は、何回も話し合いをし、市への要望をまとめ、多大な労力を払って、市との交渉を続けてきました。 そのようななかで、保護者の要望が聞き入れられなかった問題、それが、まさに指定管理者制度の問題点でもあるのです。選考の透明性、議員の兼職の排除、子どもを安心して預けられる保育園の条件のひとつとして、職員が安心して働き続けられる職場環境であること、そして引継ぎの問題、といった点においてです。 以上の理由により、決定された法人の問題としてではなく、この制度を保育園に導入することに無理があるということ、しかもこういったことが5年という期間で繰り返される、といった大きな負担が保護者の側にも行政にもあります。加えて、民間保育園を中心に保育行政がなされてきたという八王子の特殊事情もあって、これ以上公立保育園を減らすことはすべきではないという点からみて、今回の長房西保育園への指定管理者制度の導入に反対し、112号議案の反対討論といたします。 介護保険法の改正に伴う条例変更に対する反対討論 第95号議案平成17年度八王子市一般会計補正予算、第97号議案平成17年度八王子市介護保険特別会計補正予算、そして第103号議案八王子市介護保険条例の一部を改正する条例設定について、反対の立場から討論を行います。 これらの議案は、施設入所者のホテルコストと食事代の負担を利用者に求める、今回の介護保険法改正に伴う補正でありますが、内容を見る限り、法の横滑りをしているだけで、こういった改正を受けて、市としてどうする、といった対応がなんら見られないものとなっています。 5年前の介護保険導入のとき、まさに、介護保険は地方自治の試金石とも言われていました。 つまり、大枠は国が定めるとしても、どういうサービスを提供するか、保険料をどうするか、といったことが自治体の裁量となったからです。今回の法改正に当たり、千代田区では、激変緩和策としての新たな補助を行うことにしています。これは、介護保険で暮らし続けられるわけがない、区が何をすべきか、という観点から、検討がされてきているときいており、そのひとつが、今回の施設給付の見直しに伴う、市独自の対応となったといえます。 具体的には、通所介護利用者の食事負担として、利用者負担が10月から倍額になるところを、市と事業者がともにその負担を引き受けることによって、利用者負担を据え置くという措置を講じるとしています。また、施設入所者の負担増については、所得段階ごとに75%から50%の補助を行うとし、負担増に対する抑制策を講じています。 八王子市は千代田区に比べて、圧倒的に高齢者人口も多く、現状の把握は大変な作業と思われますが、 今回の改正がどういった影響を与えるのか、実態把握とその分析、そして市としての特徴を考慮しながら、ニーズとして何が必要かということを市民に対して、明確にする義務があります。委員会の議論の中で、今、分析をしているところであり、第3次介護保険事業計画と平行して、考えていきたいという答弁もありましたが、そういった市の全体計画の中での、施設給付見直しでなければ、市民の不安が増大するだけで、混乱を引き起こしかねません。 国としては、来年度に大幅な保険料の引き上げが見込まれる保険者、自治体ですね、そういった自治体もある中で、給付の適正化は喫緊の課題であり、制度の持続可能性の観点からも居住費・食費の見直しは早急に行うことが求められているとしていますが、そのあまりの性急さに、国も大きな混乱が予想されることを承知しているわけです。しかしながら、自治体として今回の改正にどう対応するかは、具体的に検討されてきていません。通知を出し、補足給付の申請を受け付けるということのみです。介護保険、介護サービスが自治体独自の施策であるはずなのに、今回の補正は、一方的な国の制度変更を利用者負担、国の負担でまかなうことを示しているだけで、市の対策がなんらありません。こういった法改正を受けて、市としての介護事業をどうするかがまさに問われているのです。それがなんら示されていない今回の補正予算はとても承服できるものではありません。 また、3ヵ年の第2次介護保険事情計画のなかで、保険料や、負担額が決まってきていることを考えるならば、中途からの変更は契約違反であるといった委員会での指摘は的を射ています。 できるだけ早く、実態把握の分析を行い、改正の影響を把握し、そしてそれに対する市としての対策をどうするか、ということを明確にしていただきたいと要望します。介護保険特別会計において、7000万円の減額補正ですが、全部を減額とするのではなく、どれだけの影響があり、生活実感からいってその影響の度合いを測り、何が必要か、どういったサポートが必要か、それらを割り出して、補正予算を組むべきでありました。 また、一般会計においても、この改正で施設での食事代が保険対象外となったことから、 生きがいデイサービスで提供されていた食事の負担額が増額され、360万円あまりの減となっています。わずか360万円です。なぜ、千代田区のように、激変緩和策を取れなかったのでしょうか。千代田区では280万円の補正をやりくりの中で捻出しているのです。制度が変わったからではなく、八王子としてどう高齢者支援を行っていくのか、それが問われているのです。よって、一般会計の介護保険がらみの減額補正はまさに無策を意味しています。 今回の改正の趣旨である、施設利用者と居宅高齢者の負担バランスをなくすということについてですが、ホテルコストを徴収することから、ショートステイ利用者にもホテルコストがかかってきていることが問題視されています。在宅で高齢者を介護している支援者にとって、ショートステイの利用はかかせないものであり、介護の社会化から見ても、欠かせないサービスとなっています。それが、ホテルコストとして、在宅でありながらも、余分な費用負担を強いられ、ひいては利用の抑制となることが懸念されます。在宅ケアを手厚くといいつつも、こういった矛盾があります。楽しみとしての旅行でのホテル代とは違います。在宅介護を続けていく上でのニーズとしてのショートステイ利用であるのですから、こういったニーズとしての公共サービスの利用負担割合が、個人が持つ購買力に依存するほうへとシフトしていくならば、もてるものと持たざるものとの生活格差は広がり、持たざるものにとって、生存に必要なニーズさえも、満たされない結果となっていきます。 また、高齢者の尊厳の観点から言うならば、施設の個室化は時代の流れです。しかしながら、今回のホテルコスト、食費の自己負担の導入により、個室を選択したいという選択肢が経済的理由によって狭められてしまうことが明白になりました。 八王子においては、950人が対象となる利用者負担段階が第4段階、つまり年金266万円以上の人に対して、なんらの補足給付がないことから、相部屋・個室どちらの利用者にとっても、現行より月3万円あまりの負担増で、個室利用者は平均で12万8000円となっています。厚生労働省はサラリーマンの年金収入に関しては、月額23万3000円をモデル世帯としているのですが、この層は、利用者負担が第4段階の、しかも介護保険料負担段階での所得金額200万円未満に属する世帯ともいえます。夫婦どちらかが施設利用となり、個室を利用したいと思っても、なかなか決断することができません。というのも、在宅で残るものが、月10万円程度で生活をしなければならないからです。特定入所者介護サービス費の運用で、救済される部分もありますが、それは、預貯金が450万円以下、残された配偶者の年金収入が80万円以下というきわめて厳しい世帯に対する援助でしかありません。 介護サービスは生存に必要なニーズなのか、生活充足のための欲望なのか、で料金設定が異なってくるのですが、今回の改正はこの生存に必要なニーズの部分が圧縮され、生活資力のないものは、生存に必要なニーズさえも享受することができなくなるといた状況が発生しかねません。 65歳からの老年者控除がなくなり、年金控除額も減額となり、また、来年から3年かけて、65歳以上で、所得金額が125万円以下のものに対する非課税措置も廃止されるという税制改悪も待ち受けています。課税世帯が増えることになり、介護保険料も段階がかわり、介護保険利用料の増額が高齢者を直撃します。 今回の改正は持続可能な介護保険といいつつも、年金生活者の尊厳ある、持続可能な暮らしを破壊する改悪と言わざるを得ないことを指摘して、反対討論を終わります。 <ページトップへ> |