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市立長房西保育園の民間委託に反対する請願 |
【9番陣内泰子議員】請願第8号、市立長房西保育園の民間委託に反対する請願に、賛成の立場か
ら討論を行います。 この請願は、民間委託されるという情報に不安を持った保護者が、再三市側に説明を求めてきました が、市側からは、何ら保護者に対し連絡をしない状態が続き、12月10日にやっと保護者側の要請で開か れた説明会の場で、市は公設民営にしていきたいという説明を行いました。話し合いの後半には、公設 民営にしていくといった発言もあり、保護者たちがこの発言に反発、父母の会が結成されて、民間委託 反対のもと1万筆以上の署名を集めて提出されたものです。決して何ら一部の情報操作や政治的な意図 によって行われたものではなく、まさに子どもたちに安心できる保育の場を願う保護者たちの大きな働 きによってこれがなされたということを改めて強調いたします。 この請願を審議するに当たり、まず、民営化の是非を問う前に、市側は大きな間違いを犯しています。 というのは、公設民営の対象が保育園であることから、子どもを預けている保護者、そして、保育に当 たっている職員等、関係者との充分な話し合いが持たれなければならないところ、市はその責務を放棄 してきているのです。この方針は、10月3日の政策会議で決定されたということですが、その前も後も 市側からの保護者の意見の聴取は何らなされていません。つまり、保護者の意見や要望、当該保育園の 保育士等からの民間委託をするに当たっての問題点などが何らリサーチされないまま、まさに机上の論 理で政策決定されたということに対し、大きな憤りを感じます。これが市民との協働をうたう市の姿勢 とするならば、市にとって都合のいいところのみの協働で、そうでないところでは、一方的に市の都合 を市民に押しつけるといったそしりも免れません。武蔵野市の場合は、保護者などの意見を取り入れた 公立保育園のあり方を考える委員会での1年にわたる民営化の議論を踏まえて、保育知識や経験の蓄積 と保護者の安心感を優先させて、民営化よりも、まず公立保育園として存続させ、2005年からの3年計 画で改革を進めていくとの方針を出しています。 次に、民営化の是非をめぐってです。保育園の民営化に対しての議論が何らなされていません。また、 市としてなぜ民営化が必要なのかといった根拠も広く市民に示されていません。今回の、1万人にも及 ぶ民間委託反対の請願者にとって、保育園の民間委託が長房西保育園だけの問題ではないからこそ、こ れだけ多く人の関心と賛同を集めたと言えるのです。 委員会論議の中で、市側は公立保育園の全部を民間に委託する考えはないと説明しています。つまり、 公立保育園としての必要性を充分認めているからなのですが、具体的な計画が示されているわけではあ りません。また、今、次世代育成支援推進法に基づく行動計画を立てることになっています。保育ニー ズのアンケートも実施されているところですが、こういった計画の中で、保育所運営のあり方も検討さ れるべきであり、公立保育園の役割、民間保育園の役割等、明示されてしかるべきでしょう。その計画 がまだ策定されていない現在、長房西保育園の民営化理由として、子育ての中で保育園の行っていない 親子の支援、つまり、子育て経験のない親が育児書を頼りにして子育てしている不安をサポートし、虐 待などをなくすようにするために子育て相談センターを強化していきたい、その人材強化として公立の 保育士を充てる必要があるとの説明ではありますが、これは、何ら長房西保育園を民間委託する根拠に はなっていません。こういった子育てサポートは当然のことであり、取り組みとしては遅過ぎるぐらい と言えます。しかし、そのためにこちらの人件費を削ってあちらに充てるといった、同じパイの中での 分け合いでは、未来の子どもをはぐくむ保育行政とは言えません。折しも国は、公立保育園の運営費の 国庫補助金を一般財源化することによって、保育充当費を削減し、また、東京都も民間保育所への公私 格差是正としてのサービス推進費補助の削減を提示しています。つまり、公立保育園に対する国の補助 金の削減影響を民間委託によって少しでも減らそうとするものであり、さりとて民間保育園も都からの 補助金削除で厳しい運営を強いられているといった、国を頂点とした保育予算の削減のしわ寄せの押し つけ合いであり、その影響を子どもたちはもろにかぶってしまうのです。 先日の朝日新聞の「私の視点」で、全国私立保育園連盟常務理事の水上克己氏は、公立保育園の民間 委託を低コストでどんどん進めることが危惧されると述べ、民間保育園からも、今の民営化の流れに警 告を発しています。市側は、民営化の根拠として、民間でできることは民間でと言いますが、保育の公 共性に対する配慮からのこういった補助金のカットは、民間保育園での保育の質の低下をもたらすもの とも言えます。つまり、パート保育士の多用によるローテーション勤務といった合理化が子どもと保育 者との関係を不安定なものにし、また、保護者との連携も図りにくいといった弊害も出始めていると報 告されています。本市の場合、82園の保育園中2割に当たる17園が公立保育園として運営されており、 まさに民間保育園に支えられて保育サービスが提供されてきていると言えますが、その中での公立保育 園の役割は、サービスの質を確保をするための基準づくりとして位置づけられるものであり、これ以上 少なくすることは許されません。公の直営施設が存在し、行政が保育サービスの提供者として直接責任 を負ってきたからこそ今の保育サービスの質があると言えるのです。志高く非常に充実した保育を行っ ている民間保育園がある一方、正反対の園があることも事実です。そういった中で、保護者にとって、 そして子どもにとって安心できる保育の質とは何か、そのために何が必要かを検討する中での民営化論 議でなければなりません。今回の請願があって、初めてそのような議論も始まったと言えるのです。 最後に、公立保育園の何園かを民間委託するとして、保護者を初めとした関係者との合意の方向性が 出たとしても、実際に民間委託をしていく場合のルールづくりが必要であり、重要です。長房西保育園 に在園している子どもたち、保護者は、既に保育士との関係を何年にもわたってその信頼関係を築き上 げてきています。それを一方的に破棄することは子どもに大きな負担をもたらすだけでなく、心に傷を 負う子どもも出てくる危険性があります。 子どもは適応力がありすぐ慣れる、移行も1カ月で充分などといった乱暴な論議がこの間の委員会の 審議の中で出ておりましたが、長房西保育園を余儀なく転園した子どもの様子が保護者会のニュース等 に載っていますので簡単に紹介いたします。その保護者は、余儀なくして長房西保育園から私立保育園 に転園したんですけれども、その中でこのように述べています。「息子は、転園して1カ月ぐらいのこ ろが拒否反応のピークでした。毎朝玄関で、西保育園へ行くと言って大泣き、出勤時間も刻々と迫って いたので、とりあえずだましだまし連れていくと、その保育園で担任の先生に西保育園に行ってもいい ですかと泣きながら訴えていました。その姿を見て、私も涙がぼろぼろ。でも、もう西保育園には戻れ ないんだよと言い聞かせました。あのときが一番私も息子もつらかったのです。その後は、慣れたのか、 あきらめたのか、西保育園のことは余り言わなくなりました。でも、かわいそうで、本当に後悔してい ます。人格形成の大事な時期に深い深い傷を負わせてしまったんだなと、自分たちを責める日々でした。 なれ親しんだ建物、先生たちとの別れがどれだけ子どもの心の傷になるか、自分は経験上わかりました。 園によって合うか合わないかあると思いますが、息子は、公立から私立に転園して1年たった今は、あ きらめたのか本当に何も言わなくなりましたが、親の都合で息子を転園させたことを大変申しわけない ことをしたと思っております。私たち夫婦も、転園してみて、どれだけ西保育園がいい保育園だったか、 身にしみてよくわかりました。西保育園の子どもたちには、私の息子みたいな思いはさせたくありませ ん。しかも、行政の都合だなんて絶対に許すことはできません」、こんなニュースが保護者の会のに載 っています。このように一方的な転園については、民間委託、そして環境の変化に対しては、配慮をし なければならないということがこのニュースから伝わってまいります。 このように、公立保育園で、また、公立保育園であるということで、長房西保育園を入園の際に選択 している方々も中にはいらっしやいます。また、そのような場合、途中での運営形態の変更は契約違反 とも言えるのではないでしょうか。さらに、新年度からの入園に対しても情報公開されていないのであ るならば、現在の在園児が卒園してからの変更、また、新入園者に対しては、運営形態が変更になるこ との情報が提供されるべきではないでしょうか。つまり、民間委託への準備をどうしていくのか、その ルールが保護者を含めた関係者でつくられていかなければならないのです。しかも、今回の民間委託決 定に当たり、こういった移行準備のルールは何ら具体的になっていません。示されているのは準備期間 に6カ月程度をかける、お母さん方が不安にならないように、それを取り除くように努力する、一斉に 保育士を引き上げるようなことはしない、延長保育はしないなどということが断片的に語られているだ けです。これでは、保護者の納得は到底得られないのではないでしょうか。 以上、3点の理由から、長房西保育園の民間委託に反対し、この請願に賛成の討論といたします。 <ページトップへ> |